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行政書士試験 過去問解説 令和5年度 問題5

問題5

罷免・解職に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1 衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名、離党その他の事由により当該議員が政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失う。
2 議員の資格争訟の裁判は、国権の最高機関である国会に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない。
3 閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになる。
4 最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されるが、その後、最高裁判所の長官に任命された場合は、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として改めて国民の審査に付される。
5 裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず、また、著しい非行があった裁判官を懲戒免職するためには、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決が必要である。


正解 3


(解説)


1 比例代表議員については、国会法第109条の2において、議員となった日以後において、当該議員が衆(参)議院名簿登載者であった衆議院名簿届出政党等以外の政党その他の政治団体で、当該議員が選出された選挙における衆(参)議院名簿届出政党等であるものに所属する者となったときは、退職者となる、と定められております。つまり、A党の比例名簿に載っていた人が同じ選挙で名簿を届けていたB党に当選した後に乗り換えた場合は、議員ではなくなる、ということです。A党から除名されてA党の人間ではなくなったとしても、他党に乗り換えなければ議員を辞める必要はありません。


2 議員の資格争訟については、議員の自律権を尊重するため、除名を含めて司法審査は及びません。ただし、これは国会議員に限ったことであって、地方議員については、令和2年11月25日の最高裁の判決により、除名はもとより、出席停止についても司法審査が及ぶとされたことに注意が必要です。本問は国会議員に関することなので、この点は正しい記述です。しかし、議員の資格争訟についての裁判は、国会の権能ではなく、議院の権能です。この点が誤りです。


3 正しい記述です。内閣の意思決定が慣例上全員一致とするならば、衆議院の解散に反対する大臣がいたとしたら、内閣総理大臣は国務大臣の任免権があるので、この大臣を罷免した上で内閣総理大臣がこれを兼任して意思決定を行うことになります。ちなみに最近の事例としては、2010年の民主党政権時代に、鳩山首相が普天間基地の移設問題に関する政府方針の署名を拒否した、福島瑞穂国務大臣を罷免した例があります。


4 最高裁判所裁判官の国民審査制度は、最高裁判所の裁判官に任命されたら、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民審査に付されます。この審査の日からさらに10年を経過した最初の衆議院議員総選挙の時に改めて国民審査に付されます。最高裁判所の長官になったから国民審査に付されるということはありません。


5 裁判官の罷免は公の弾劾によらなければならないですが、弾劾裁判は、国会に設けられた裁判官弾劾裁判所で行われます。この審理は、国会議員が裁判員となって審理を行います。ちなみに懲戒免職は裁判官の懲戒処分としてはできません(戒告または1万円以下の過料のみ)。